夢でおやすみ

童話みたいなおはなし

猫の温泉・6(終)

ぴちょん。


水滴がおちる音で、まゆみさんは目をあけました。

温泉からでてきた さびねこが ぷるる とからだをふりました。

さびねこは ゆっくりと 森の方へとあるきはじめました。


(あ・・・)


と かけそうになった声を まゆみさんは のみこみました。

そのあと なにを言ったらいいのか わからなかったからです。


ふと さびねこはたちどまり ちらり とまゆみさんの方に視線をなげかけました。

声をださずに にゃ と口を動かしました。

そうして またゆっくりと 森のほうへとあるいてゆきます。


まゆみさんは 手をふりました。

緑のかげにきえてゆく さびねこに 手をふりました。

その姿がみえなくなり かすかに 枯草をふむ足音が聞こえなくなっても

まゆみさんは たくさんたくさん 手をふりました。

心のなかで くりかえし つぶやきながら。


大好きだよ。ずっとずっと。大好きだよ。


と。

 

 

<猫の温泉・おわり>


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