夢でおやすみ

童話みたいなおはなし

猫の温泉・5

わたし 今 にしんのなかにいる。
にしんが見てた わたしを見てる。

 

にしんの中から にしんの視点で 見ている まゆみさんの瞳に
かつての まゆみさんの さまざまな姿が うつりました。


猫のごはんの 支度をしている まゆみさん。
コップを洗っている まゆみさん。
洗濯物をたたんでいる まゆみさん。
ドライヤーで髪をかわかす まゆみさん。

それらの どの様子を見ているときにも
胸のあたりに なんだか ほわぁっ ほわぁっとした 感触が広がります。

 

なんだろう この 胸の感じ・・・

 

それは 言葉では うまく あらわせないのだけれど。

ぽかんとして。

あっけらかんとして。

何にも ないようで。

でも ほんのすこしだけ やわらかい

呼吸のしやすい 空気のような。

かすかに 不思議と

何かに まもられてるような。

ただただ そのものだけを

まっすぐまっすぐ 見ているような。

 

そうだったの。
にしんは いつも こんなふうに。

 

目の前の かつてのまゆみさんと 目が合ったような気がしました。

でも にしんの視点で見ている まゆみさんの瞳には
もう たくさんの涙が あふれて あふれて
その視界は ゆらゆらと にじんでしまうのでした。

 

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